豊かな社会とその持続的な発展は、科学・技術の進歩にあずかるところが大きい。天然資源に恵まれない日本国が、世界と伍して持続的に発展しうる社会を構築するためには、科学・技術の更なる進歩・発展が一層求められる。化学は唯一新しい分子を創り出すことができる学問であり、科学・技術の根幹を支えるものである。特に有機化学分野は、数多くの有用な機能性有機分子を創り出すことにより科学・技術の進歩・発展に大いに貢献してきた。創り出した機能性有機分子を活用するには、その分子の構造、反応に対する深い理解が不可欠である。
我が国における反応有機化学の歴史は古く、1950年に第一回有機化学反応機構討論会が開催されてから、毎年討論会において活発な学術交流が行われてきた。一方、1968年には第一回構造有機化学討論会が開催され、その後毎年開催されて日本の構造有機化学の発展に貢献してきた。1973年には反応有機化学と構造有機化学の分野間の交流を目的として基礎有機化学連合討論会が開催され、その後隔年で連合討論会が実施された。2008年には第58回有機反応化学討論会と第38回構造有機化学討論会が合体した第19回基礎有機化学討論会が開催され、その後は毎年基礎有機化学討論会として実施されるようになった。有機化学の基礎分野としての反応有機化学と構造有機化学はもはや融合分野として成熟したものになりつつある。また、有機化学の基礎分野と応用分野との関係も益々密接なものとなっている。
このような状況に鑑み、基礎有機化学に関連する学術界と産業界の科学者・技術者が一堂に会し、未来社会を支える科学・技術の進歩・発展と人材育成の一端を担うことを願って、ここに基礎有機化学会を設立する。この学会が、我が国の基礎有機化学分野の人材交流と研究成果の発信の場となり、国際的にも重要な役割を担うことを期待するものである。
平成22年6月18日 基礎有機化学会・発起人一同
基礎有機化学会発起人(50音順) | |
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安倍 学(広島大院理) | 磯部 寛之(東北大院理) |
伊與田 正彦(首都大院理工) | 大須賀 篤弘(京大院理) |
岡田 惠次(阪市大院理) | 川島 隆幸(東大院理) |
北川 敏一(三重大院工) | 久新 荘一郎(群馬大院工) |
吉良 満夫(東北大院理) | 新名主 輝男(九大先導研) |
菅原 正(東大院総合) | 鈴木 孝紀(北大院理) |
高田 十志和(東工大院理工) | 時任 宣博(京大化研) |
戸部 義人(阪大院基礎工) | 鍋島 達弥(筑波大数理物質系化学域) |
福住 俊一(阪大院工) | 三島 正章(九州大先導研) |
水野 一彦(阪府大院工) | 山口 茂弘(名大院理) |
山高 博(立教大院理) | 山本 陽介(広島大院理) |
学会化準備委員会 | |
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吉良 満夫(東北大院理、小委員会委員長) |
福住 俊一(阪大院工、準備委員会委員長) |
菅原 正(東大院総合) | 北川 敏一(三重大院工) |
安倍 学(広島大院理) | 末延 知義(阪大院工) |